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日清戦争~日露戦争前(明治26~明治36/1893~1903)
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作詞 佐々木信綱
作曲 奥好義

険しき谷も踏みさくみ
鋭き川も打ち渡り
敵地に深く分け入りて
我等は兵糧を運ぶなり

砲の轟き鬨の声
腰の剣は音立てて
胸の血潮は燃ゆれども
我等は車を進むなり

嵐は強く雨荒び
行く手は遠く日は暮れぬ
宿らん陰も無き野辺を
我等はなおも進むなり

人は休みてある頃も
我等は常に勤むなり
人は臥所にある頃も
我等は兵糧を領つなり

朝餉の飯を明けぬ間に
かしこにここに配りつつ
炊ぐ器を馬に乗せ
出で立つ時も夜は暗し

東に西に行き巡り
道無き道を踏み分けて
眠らぬ夜半は続けども
疲れ休むる暇も無し

我等の業は苦しきも
塵より軽き身一つを
皇国と君に捧げつつ
重き輜重を担うなり

黄金も溶くる夏の日に
垢付く顔を照らされて
手足も凍る雪の夜に
破れし衣を晒すなり

死するに勝る苦しみも
人には知られぬ働きも
我等はいかで託つべき
我等はいかで厭うべき

大君の為国の為
我等は勤め尽くさんと
華やかならぬ我が業を
我等は勇みて勤むなり
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作詞 永井建子
作曲 永井建子

雪の進軍氷を踏んで 
どこが河やら道さえ知れず
馬は倒れる捨てても置けず 
ここはいずこぞ皆敵の国
ままよ大胆一服やれば 
頼み少なや煙草が二本

焼かぬ乾魚に半煮え飯に 
なまじ生命のあるその内は
堪え切れない寒さの焚火 
煙いはずだよ生木が燻る
渋い顔して功名話 
「すい」というのは梅干一つ

着の身着のまま気楽な臥所 
背嚢枕に外套被りゃ
背の温みで雪溶けかかる 
夜具の黍殻しっぽり濡れて
結びかねたる露営の夢を 
月は冷たく顔覗き込む

命捧げて出て来た身ゆえ 
死ぬる覚悟で吶喊すれど
武運拙く討ち死にせねば 
義理に絡めた恤兵真綿
そろりそろりと首締めかかる 
どうせ生かして帰さぬ積もり
作詞 乃木希典
作曲 山本銃三郎

我が日の本の軍人
強き敵とて何恐るべき
弱き敵とて侮りはせぬ
勝ちて驕らぬこの心ぞ
強きを挫くの力と知れや
強きを挫く力を持てば
弱きを助ける情もござる
我が日の本の軍人
千歳万歳万々歳
その名を世界に輝かせ

我が日の本の軍人
君と国とに捧げし身には
家も命も何思うべき
心は石か黒鉄なるか
五条の勅諭をただ守るなり
日本魂を勅諭で磨き
日本魂で勅諭を守る
我が日の本の軍人
千歳万歳万々歳
その名を世界に輝かせ

我が日の本の軍人
討ち死になせしその戦友の
功名手柄を無にしちゃならぬ
国の誉れも我が身の幸も
命捨てたるその戦いの
骨を砕きし響きと聞けよ
鮮血に染めなす色とも見よ
我が日の本の軍人
千歳万歳万々歳
その名を世界に輝かせ

我が日の本の軍人
軍役終われば故郷に帰り
農工商業皆それぞれに
正しき道に努むる事は
戦するのも心は同じ
家を富ませば国また栄ゆ
和合一致の尚武の心
我が日の本の軍人
千歳万歳万々歳
その名を世界に輝かせ
作詞 中村秋香
作曲 多梅雅

硝煙みるみる山をなし
砲弾あたかも電に似たり
波は激しく天を衝き
日光暗黒風咽ぶ
ああ恐ろしや凄まじや
これぞ真の修羅の海

縦横自在に駆け巡る
神変不測の松島艦
蛟は躍り鰐怒る
波を蹴破る西京丸
奮闘激戦雷を繰り
電を劈く赤城艦

轟裂の響き天を撃ち
あるいは沈みまたは焼け
または逃げ散る敵の艦
折りしも起る万々歳
凱歌の声も高千穂の
帆柱さして下る鷹
作詞 佐々木信綱
作曲 奥好義

煙も見えず雲も無く 
風も起こらず波立たず
鏡のごとき黄海は 
曇り初めたり時の間に

空に知られぬ雷か 
波にきらめく稲妻か
煙は空を立ち込めて 
天津日影も色暗し

戦い今かたけなわに 
務め尽せるますらおの
尊き血もて甲板は 
唐紅に飾られつ

弾丸の破片の飛び散りて 
数多の傷を身に負えど
その玉の緒を勇気もて 
繋ぎ止めたる水兵は

間近く立てる副長を 
痛む眼に見とめけん
彼は叫びぬ声高に 
「まだ沈まずや定遠は」

副長の眼は潤えり 
されども声は勇ましく
「心安かれ定遠は 
戦い難くなし果てき」

聞きえし彼は嬉しげに 
最後の微笑を漏らしつつ
「いかで仇を討ちてよ」と 
言う程も無く息絶えぬ

「まだ沈まずや定遠は」 
この言の葉は短きも
皇国を思う国民の 
胸にぞ長く記されん


副艦長の過ぎ行くを 
痛む眼にみとめけん
苦しき声を張り上げて 
彼は叫びぬ副長よ

呼び止められし副長は 
彼のかたえに佇めり
声を絞りて彼に問う 
まだ沈まずや定遠は

皇国に尽くす皇軍の 
向かう所に敵も無く
日の大御旗うらうらと 
東の洋を照らすなり
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